「直、大丈夫か?」




顔を上げた直は、涙だらけの瞳で、俺を見つめて微笑んだ。



もう一度、ぎゅっと抱きしめた。



俺の中では、高校生である矢沢直に戻っていた。





いつも無理してさ。


平気なフリして・・・・・・

余計俺を心配させるんだよ。




あの頃から変わってないよ、直。




でも、そんなお前が俺は好きだよ。






「話せるようになるまでこうしててやる」




ソファに座り、俺の胸に顔を埋めた直を抱きしめた。






今日は、会社の沙織ちゃんと真由美さんと美味しいケーキを食べに行くと言っていた。




だから、最初俺は・・・・・・大野関係のゴタゴタで泣いているのかと思った。




でも、すぐに違うとわかった。



そういう涙は、隠す。




こんな風に泣きじゃくるのは、そんな理由じゃない。