ただ、好きっていう気持ちが自分の中で上手く表現出来なくて。
目が合ったら、何故か背きたくなったり。
好きっていう気持ちを伝えたら、現実はもう目の前にやってくる。

「好き」か「嫌い」か。

その現実に目を向けるのが怖い。
それはあたしが弱虫だから?

・・・目がかゆい。
今のあたしの率直な感想。

「ねぇ美紅ー、これやっぱり変じゃない?」
「はぁ?変じゃねーし」

自分の姿は自分で見られない。
だから気になってしまう。余計・・・。
「そうかなぁ」
「そうだよ!っていうかあんたもうちょい自分に自信持ちなよ」

教室に向かう廊下をのろのろ歩いていると、二人はもう現れていた。

「おう」
「おうっ」
この二人は仲良さそうだけど・・・、あたしは・・。

「・・・あれ?」
俯いているあたしの顔を覗くかのように、彼が顔を向けてくる。
「へ?」
「あ、繭ねメイクしたのー♪かわいい?かわいい?」
ほっぺをぎゅっと掴まれる。
目が合って、その目が離れなくなって。

「うん、いいんじゃない?かわいいかわいい」
「似合ってるよ、繭ちゃん」
ピースをして、二人が笑う。
「お前には聞いてねーよ!」と美紅が蹴りを入れる。
そそくさと歩いていく二人の後ろを、あたしたちが歩く。

「結んでないほうがいいと思うよ」
「え?」
「・・・髪。」
「あ、うん、ありがとう」
それだけの会話なのに。
すごく自分の中で嬉しい言葉だった。