「え・・・?」
髪を触っていた手を止めて、あたしと目を合わせる。
「その・・、手首の・・・」
あたしが言うと、美紅はシャツを伸ばして傷跡を隠した。
「あー?これ?リスカの痕だよ?」
「・・・・どうして?」
「中学の頃からだよ。深くないから心配しないで」
「でも・・・」
「大丈夫、死ぬ気はないの」
『死ぬ気はない』。
その一言に、悲しさが現れている気がした。
美紅もまた、心に傷を抱えた人間なんだろうか。
それ以上は、話すのが痛々しくて、詮索しないようにした。
でも、あたしも同じ人間だから・・・。
「引いた?」
「え・・・?」
「腕」
「ううん」
『だってあたしも一緒だもん』
そう、何処かであたしが言った。
「たまに分かんなくなるの。
生きる意味、価値、生まれてきた意味」
考えてもしょうがないんだけどね、と美紅は続けた。
「人と比べちゃいけないって分かってても、比べちゃう」
「大切なものがわかんない」
まるで、あたしの言いたいことを言ってるかのように。
「繭とは・・・、あたしと同じ感じがした」


