AVENTURE -君の名前を教えて-

「はい、これ」

バッグを手渡される。

「あ…ありがとう、ございマス」

私は頭の中が整理できていないまま、キョトンとした顔でお礼を言うと、男の人はニッと笑って頷いた。

「どういたしまして」

ちょうど言い終わった時だった。
男の人の後ろに、黒い影がぶつかってきた。と同時に、ポケットに入れていたらしき財布が宙を舞い、さっきまでのびていたひったくりが、それをキャッチして走り出した。

「あっ!」

それに気づいた男の人は、小さく舌打ちすると、聞いたことのない言葉を叫びながら、後を追いかけていった。