AVENTURE -君の名前を教えて-

「…アヤのこと、好きなの?」

聞かれて私は首を横にふった。

「わかんない。だって、フラれたばっかりだし、悔しいけどアイツのこと、たぶんまだ好きだし。それにアヤには会ったばっかだし。でも、アヤのことが気になるし、アヤが何も思っていないのに、キスしてきたんだって思ったら…」

きゅうっと胸が締め付けられるような思いがした。

「…辛いと思った?」

聞かれて私はこくんと小さく頷いた。

アイツのことを忘れられるなら、別の人とひと夏の思い出で忘れられるのなら。


それでもいいと思ってたけど。

その相手のことが、どうやら好きかも知れない。
そんなこと、あるわけないって思ってたけど。
でも。


「辛いし、苦しいんでしょう?思い切り泣いたほうがすっきりするわよ」

「うっ…っ!」

お兄さんの優しい声。
静かな部屋の中で、私の泣く声だけがずっと響いていた。
お兄さんはそれから何も言わず、私が泣き止むまで、優しく、ずっと頭を撫でてくれていた。