AVENTURE -君の名前を教えて-

「あなたは相手のこと、嫌い?」

言われて私は唸る。

「嫌い…じゃないと思います。その、恋愛感情かどうかは私にはわからないですけど…」

そこまで口にして、ふと思った。


…付き合ってるフリをしているだけなのに、気持ちが伴っていないようなキスをされるのが嫌って、なんか変じゃない?

てか、それに対して私が怒るのって変だよ。


「どうしたの?」

お兄さんに声をかけられて、私ははっとする。

「え?あ…いえ、何でも」

そう答えたものの、私の中にもやもやとしたものが広がって消えない。


アヤにキスされるのが嫌だったのかな。


そう思った瞬間、アヤにキスされたことを思い出す。
顔が熱くなる。


…やっぱり違う。
アヤに、適当な感じでキスされたのが嫌だったんだ。


そう思った瞬間、ズキンと胸が痛んだ気がした。

「面白いわね、あなた」

ふふっと微笑むお兄さんに、私はえ?と首を傾げた。

「ころころ表情が変わって、見てて飽きないわー」

楽しそうに笑うお兄さんに、私は急に恥ずかしくなり、また、顔を俯けた。

「前を向きなさい」

お兄さんに言われて、私はゆっくりと顔を上げた。

「少しは色々、整理できたかしら?」

言われて私は頷いた。

「女の子はいつだって笑っていなくちゃ、ね?」

お兄さんが笑う。
私もつられて笑えた。