AVENTURE -君の名前を教えて-

「相手の素性とか、そんなことはどうでもいいから、あなたが思ったことを素直に話して?」

優しいお兄さんの言葉に、私は深呼吸をひとつし、口を開いた。

「こっちに旅行に来る前に、私、失恋したんです」

お兄さんはじっと、私の方を真剣な顔で見つめながら相槌をうつ。

「彼とは空港で出会ったのが最初でした。でも、名前も何も聞けないまま、彼とは別れて。その後、お兄さんに言われた通りにしたら、また、再会できたんです」

アヤの顔が、ふと、頭の中をよぎった。

「彼と一緒にいると、色々…元彼のこととか思い出したりもしたけど、でも楽しかったし、もちろん、素敵な人だなって思ったりもしました。でも、いろいろあって…」

そこまで口に出したところで、私は言葉に詰まった。


あんなにいろいろしてもらったのに…私、アヤに何にもできなかった。


「うーん…そんなに悪い相手じゃないはずなんだけど」

唸るお兄さんに、私は少し首を傾げた。

「まぁ、乙女心が理解できてないのね、きっと」

言われて私は俯く。

「でも、私もあの時はカーッとなって思わず色々言ったんで、今思ったら、それってあんまり良くなかったかなって、思うんです」