剣と日輪

「いえ。こちらこそ、無理に押しかけてしまいまして」
 公威は深々と謝った。座敷の編集者達が、
「学生が何の用だ?」
 と非斥(ひせき)の眼差しを送っている。
「仕事の邪魔するな、小僧」
 と罵(ののし)らんばかりである。
 公威は用事を片付けねばならない。
「あの、これ」
 公威は風呂敷包を掲げた。
「僕が書いた小説の原稿です。読んで頂けますでしょうか」
「おう」
 川端は公威からの贈物を両腕で受領(じゅりょう)すると、荷の重みを片手で量った。
「読ませて頂くとも!」
 川端は、公威の予想通り寛容と理会(りかい)に溢れていた。
(俺は素晴らしい師を得た)
 公威は、
(今文学への道程が開けた)
 と分別できている。
(それにしても凄まじい。大作家の日常とはこんなものなのか)
 と公威はインターンシップに来た大学生の心持で、心肝が奮えた。公威は、
「煙草」
 と、
「中世」