公威はそう合点するや、早速羊羹を摘んだ。爆弾は平岡家を避けているらしい。
公威が個室に戻って、
「夜告げ鳥」
と題する詩の詩想を練っていると、美津子が立て付けの悪い襖(ふすま)を抉(こ)じ開けた。
「何だ」
創作の邪魔をされるのが、公威は一番腹立たしい。相手が親愛なる妹でなかったら、怒鳴りあげたかもしれない。
美津子は勝手にしゃがんだ。
「お兄ちゃまは、三谷さんの妹さんを好きなんでしょう?」
「え」
美津子はにこにこしている。女の子は恋愛話に目が無い。
(相変わらず、おしゃまだな)
時折変に大人じみている美津子に、公威は女の肝(きも)の太さを感通(かんつう)させられている。
「結婚何時するの?」
「結婚?」
思いも寄らぬ将来である。悲恋(ひれん)を前提にしていた邦子とのラヴロマンスが、そんな凡流(ぼんりゅう)に到るなんて、公威には微塵にも想像できない。
「あ」
美津子は公威が本気でない、と見抜いた。
「お兄ちゃまって意外と悪ね。結婚する気も無いのに」
「何だよ。お前に関係ないだろ」
「邦子さん可哀想」
「出て行かないと、これぶつけるぞ!」
公威はインク瓶を右手にした。
公威が個室に戻って、
「夜告げ鳥」
と題する詩の詩想を練っていると、美津子が立て付けの悪い襖(ふすま)を抉(こ)じ開けた。
「何だ」
創作の邪魔をされるのが、公威は一番腹立たしい。相手が親愛なる妹でなかったら、怒鳴りあげたかもしれない。
美津子は勝手にしゃがんだ。
「お兄ちゃまは、三谷さんの妹さんを好きなんでしょう?」
「え」
美津子はにこにこしている。女の子は恋愛話に目が無い。
(相変わらず、おしゃまだな)
時折変に大人じみている美津子に、公威は女の肝(きも)の太さを感通(かんつう)させられている。
「結婚何時するの?」
「結婚?」
思いも寄らぬ将来である。悲恋(ひれん)を前提にしていた邦子とのラヴロマンスが、そんな凡流(ぼんりゅう)に到るなんて、公威には微塵にも想像できない。
「あ」
美津子は公威が本気でない、と見抜いた。
「お兄ちゃまって意外と悪ね。結婚する気も無いのに」
「何だよ。お前に関係ないだろ」
「邦子さん可哀想」
「出て行かないと、これぶつけるぞ!」
公威はインク瓶を右手にした。


