剣と日輪

 それは表裏一体の定めである。そのサイクルは、前古未曾有の回転速度で邦人を併呑(へいどん)している。庶人は廃亡の歯車中で、ただ身を潜めるしかなかった。
 翌二十五日、公威等は帰京を許された。平岡家沿線の私鉄は敵機に破壊され、公威は損壊した鉄路上を歩行して家路を辿った。近所に近付くにつれ、焼跡は霧消(むしょう)していき、家の近辺は元の通りである。
(ここは東京と、アメリカには認められていないのかな)
 家に上がってみると、一家は缶詰の羊羹(ようかん)と番茶で一服していた。
「お兄ちゃまお帰り」
 美津子が羊羹を呑込み、元気に歓迎した。
「みんな、息災だね」
 公威は安否を気遣ったのが、照れ臭い。
「おう、家族の身を案じて帰ってきたか?」
 梓は爽快な口調である。
「工場の方はいいの?」
 倭文重が問う。
「家族が心配だろうからって」
「そうか。それはそれは」
「何とも無かったみたいだね」
「うん」
 千之が得意げに、
「アメ公なんかにやられて堪るか」
 と鼻を擦った。
「こちとら江戸っ子でえぃ」
「お前も相変わらずだな」
(どうやら我が一族は、悪運が強いらしい)