「ああ。おはよう御座います」
公威は眠たげである。
「お待ちになりました?」
「いえ。然程」
公威は待ち侘びていたのに、自己否定した。
「母とおばあさま、いえ祖母は、仕度が間に合わなくて、遅れて来るそうです」
「そうですか」
「大人って化粧に時間かけ過ぎ。待ち切れなくて」
「僕は一向に構いません」
「ほんとに?」
「ええ」
「でも、悪いです。もう少し待ってみて来ない様だったら、先に上野に参りましょう」
「いいのですか?」
「二人が悪いのだし、そうしてくれと言っておりました」
「じゃ、そうしよう」
公威はベンチに三姉妹を腰掛けさせ、快活に振るまった。プリンセス達を警護する、中世ヨーロッパの騎士の心積りだった。
電車が何台か停車し、発車していった。三姉妹は段々痺れを切らしてきた。邦子が、
「もうお母様ってほんと時間にだらしないわ。平岡さんに悪いし、先に上野へ行きましょう」
と提言すると、少女達は賛同し、公威にも同意を求めた。
「じゃ、行きましょうか」
公威は引率者になった心持で、三姉妹と上野駅に向かった。
上野駅の混雑の渦中で、四人は辛抱強く三谷夫人と三谷の祖母を待ちあぐんでいた。すると邦子の知人らしきスカートの乙女が、邦子の肩を叩いた。
公威は眠たげである。
「お待ちになりました?」
「いえ。然程」
公威は待ち侘びていたのに、自己否定した。
「母とおばあさま、いえ祖母は、仕度が間に合わなくて、遅れて来るそうです」
「そうですか」
「大人って化粧に時間かけ過ぎ。待ち切れなくて」
「僕は一向に構いません」
「ほんとに?」
「ええ」
「でも、悪いです。もう少し待ってみて来ない様だったら、先に上野に参りましょう」
「いいのですか?」
「二人が悪いのだし、そうしてくれと言っておりました」
「じゃ、そうしよう」
公威はベンチに三姉妹を腰掛けさせ、快活に振るまった。プリンセス達を警護する、中世ヨーロッパの騎士の心積りだった。
電車が何台か停車し、発車していった。三姉妹は段々痺れを切らしてきた。邦子が、
「もうお母様ってほんと時間にだらしないわ。平岡さんに悪いし、先に上野へ行きましょう」
と提言すると、少女達は賛同し、公威にも同意を求めた。
「じゃ、行きましょうか」
公威は引率者になった心持で、三姉妹と上野駅に向かった。
上野駅の混雑の渦中で、四人は辛抱強く三谷夫人と三谷の祖母を待ちあぐんでいた。すると邦子の知人らしきスカートの乙女が、邦子の肩を叩いた。


