剣と日輪

 公威は必勝と共に、大声で発した。
「天皇陛下万歳! 天皇陛下万歳! 天皇陛下万歳!」
 その絶唱は日本晴れの天宇(てんう)に、真直ぐに溶けていった。
 公威と必勝は、総監室に戻った。
「十分か」
 ヘリコプターの羽音が、耳を劈(つんざ)く。
「あれじゃあ、聞こえなかっただろう」
 同意を求めるでもなく愚痴った公威に、必勝は気の毒そうに面皮(めんぴ)薄(うすし)を装った。公威は白手袋を外しながら捕囚の総監に、
「自衛隊を国軍にし、天皇陛下にお返しする為致し方なく暴挙に出ました」
 と詫びをいれた。先程までの狂気は退き、畢業(ひつぎょう)の爽(そう)達(たつ)のみがある。 益田総監は感じ入っている。
 公威は益田総監から三メートル距離を置いて、真昼の太陽を拝するがごとく赤絨毯上に正座した。楯の会制服の釦を外し、諸肌を脱いだ。必勝は小賀より鎧通しを受け取り、公威の左背後に歩んだ。公威は短刀を両手で受け取り、
「君はやめろ。生きて志を継いでくれ」
 と頼んだ。
「いいな」
 必勝は答えない。関の孫六を取った。
(先生と私の待ち望む世は、例え私が生き長らえたとて、見ることあたわず)
 必勝の心が、公威に読めた。先程の自衛官の態度に、日本の現状が凝縮されている。
(ならば共に死して、幾星霜後の皇国復活の礎(いしずえ)とならん)
(ついてくるか)
 公威に小賀が色紙を差し出した。腹を切った血で色紙に、
「武」