と身が引き締まった。
「三島先生」
「何だ」
「若し我々の要求を自衛隊が拒んだ場合、連隊長を斬ってもいいんですか?」
「駄目だ。一人も殺してはならん。連隊長に手を出すものは、俺が許さん」
「分かりました。丁重に扱います」
「頼むぞ。俺達は共産主義者や無政府主義者のような、無差別テロリストではないのだ」
「はい」
五名は自衛隊に、遺恨等ない。
「自衛隊に育まれた楯の会が、全てを賭して報恩・諫死するのだ」
公威の説く、
「決起の趣旨」
に反論する者はいなかった。
その夜、学習院、東大の先輩で文学仲間でもあった坊城俊民宛に、公威は一文を送った。
「来し方をふりかえってみると茫々として、何の感慨もありませぬ。寂莫たる味がのこるだけです。十四、五歳のころが小生の黄金時代であったと思います。実際あのころ、家へ帰ると、すぐ坊城さんからのお手紙は来てなかった?ときき、樺いろと杏いろの中間のような色の封筒をひらいたときほどの文学的甘露には、その後行き会いません」
(年表作家読本三島由紀夫より)
坊城は公威より八歳年長で、都立池袋商業高等学校の校長をしている。坊城家は公家の十三名家の一つで、大納言迄任官できる文官職の家系だった。学習院中等科一年生だった公威は、詩作に熱中していた。公威の詩、
「秋二篇」
が学習院の、
「三島先生」
「何だ」
「若し我々の要求を自衛隊が拒んだ場合、連隊長を斬ってもいいんですか?」
「駄目だ。一人も殺してはならん。連隊長に手を出すものは、俺が許さん」
「分かりました。丁重に扱います」
「頼むぞ。俺達は共産主義者や無政府主義者のような、無差別テロリストではないのだ」
「はい」
五名は自衛隊に、遺恨等ない。
「自衛隊に育まれた楯の会が、全てを賭して報恩・諫死するのだ」
公威の説く、
「決起の趣旨」
に反論する者はいなかった。
その夜、学習院、東大の先輩で文学仲間でもあった坊城俊民宛に、公威は一文を送った。
「来し方をふりかえってみると茫々として、何の感慨もありませぬ。寂莫たる味がのこるだけです。十四、五歳のころが小生の黄金時代であったと思います。実際あのころ、家へ帰ると、すぐ坊城さんからのお手紙は来てなかった?ときき、樺いろと杏いろの中間のような色の封筒をひらいたときほどの文学的甘露には、その後行き会いません」
(年表作家読本三島由紀夫より)
坊城は公威より八歳年長で、都立池袋商業高等学校の校長をしている。坊城家は公家の十三名家の一つで、大納言迄任官できる文官職の家系だった。学習院中等科一年生だった公威は、詩作に熱中していた。公威の詩、
「秋二篇」
が学習院の、


