剣と日輪

「又来ていいわよ」
 丸山は居たたまれずに、ドアの外へ出て、公威に叫んだ。
「うん。有り難う」
 公威は手を振り、明允(めいいん)の香りを残して消えた。
(何故この人は死ぬのか。分からない。思い過ごしであってくれればよいが)
 丸山は不安に耐えかね、楽屋に戻ったのだった。

 十一月十九日に、パレスホテルで班長会議があった。公威は、
「会議のメンバーの中には、行動を起こして討死するタイプと、牢屋で不変の意志を貫くタイプがいる。森田は前者だな」
 と語った。
 必勝は、
「仰るとおりです」
 と誉れに昂然と面を上げていた。小川、古賀、小賀の三名はそれを欽羨(きんせん)したが、それよりも、
(あんな事を公然と言うなんて)
 とハラハラし通しだったのである。
 会議終了後、五名は剣道の稽古で汗を掻き、新宿伊勢丹会館内にある後楽園サウナで疲れを癒した。
 公威は二十五日の楯の会例会の予定表を、四名に配った。必勝が目を通すと、
「会長の演説は三十分」
 と組まれており、自分達の名乗りは各々五分となっている。隊員への公威の訓示は五分、そして解散宣言、天皇陛下万歳三唱へと続く。
(これが、死のプログラムか。俺には格好の、死に舞台ではないか)
 必勝は、
(愈々だな)