という大海に流れ着くという壮遊(そうゆう)なストーリー仕立てになっており、パネルの出来にも大方満盈(まんえい)した。
(よし。あいつらにも見せてやろう)
瑤子も出来栄えを礼賛してくれたので、公威は開催第一日目に、都合がつかない古賀を除く必勝、小川、小賀の三名を引き連れて、会場を見学した。
「三島由紀夫展」
は大盛況だった。
必勝は改めて公威の人気の高さを実見し、
(本当にこの人を死なせてよいのか)
という自責の念が、心臓を貫いた。必勝がざっと見渡したところ、男女の比率は九対一の割合である。若者が大多数だ。公威は青年にとってヒーローなのであろう。公威も眉を八の字にしている。心底悦予(えつよ)しているのだ。
(否)
必勝は楯の会隊員が公威の前に横一列に整列しているパネルの前で、拳を握った。
(絶大な人気を誇るこの人だからこそ、魁となって死ぬのだ。俺なんかが先生と同じ事したって、狂人扱いされるだけだろう。ただの犯罪者扱いされてしまう)
必勝はそう考えると、一抹の遣り切れなさもふっと湧いてくる。
(先生は功成り遂げている。俺は何一つしていないまま世を去るのだ)
その夜必勝は、
「パークサイド」
で深夜まで深酒し、
「俺にとって最終計画こそ全てだ。俺の首を斬り損じるような真似だけは、するなよ。頼む」
と小川に手を合わせた。
「分かってる。万に一つもそんな事にはならない。安心しろ」
「有り難う。俺には最終計画しかないんだ。河だの海だのなんてない。謂わば滝さ」
(よし。あいつらにも見せてやろう)
瑤子も出来栄えを礼賛してくれたので、公威は開催第一日目に、都合がつかない古賀を除く必勝、小川、小賀の三名を引き連れて、会場を見学した。
「三島由紀夫展」
は大盛況だった。
必勝は改めて公威の人気の高さを実見し、
(本当にこの人を死なせてよいのか)
という自責の念が、心臓を貫いた。必勝がざっと見渡したところ、男女の比率は九対一の割合である。若者が大多数だ。公威は青年にとってヒーローなのであろう。公威も眉を八の字にしている。心底悦予(えつよ)しているのだ。
(否)
必勝は楯の会隊員が公威の前に横一列に整列しているパネルの前で、拳を握った。
(絶大な人気を誇るこの人だからこそ、魁となって死ぬのだ。俺なんかが先生と同じ事したって、狂人扱いされるだけだろう。ただの犯罪者扱いされてしまう)
必勝はそう考えると、一抹の遣り切れなさもふっと湧いてくる。
(先生は功成り遂げている。俺は何一つしていないまま世を去るのだ)
その夜必勝は、
「パークサイド」
で深夜まで深酒し、
「俺にとって最終計画こそ全てだ。俺の首を斬り損じるような真似だけは、するなよ。頼む」
と小川に手を合わせた。
「分かってる。万に一つもそんな事にはならない。安心しろ」
「有り難う。俺には最終計画しかないんだ。河だの海だのなんてない。謂わば滝さ」


