剣と日輪

 と開口した。訝(いぶか)しむ倉持に公威は、
「この三ヶ月で秘密保持の訓練をやる」
 と宣言し、そのやり方を詳述(しょうじゅつ)した。
「毎月三分の二ずつの隊員を招集し、全隊員揃っての会合は今日を最後、否一先ず最後とする。誰が何時の会合に集められたかを隊員相互で談じる事は禁止し、隊員がどれだけ秘密保持能力が有るか見極めたい。分かるか?」
「はい」
 倉持は軍事訓練だと合点がいった。
「だから隊員は自分が招集されなかったからといって、落胆する必要は無い。そう全隊員に伝達せよ」
「分かりました」
 倉持は班長のリーダー格で、八十八名の隊員へ次期定例会の案内をする役割を、一手に担っていた。早速事務化することに何等疑念を抱かなかった。
 公威は必勝が右腕と信託している早大生の倉持を、
「止むに止まれぬ行動」
 の烈士に加えたかった。だが倉持にはフィアンセがおり、公威が仲人を引き受けていたのだ。勧誘できなかったのである。
「後を頼む」
 公威は席を後にしたのだった。
 公威達四名は決行日を十一月の楯の会月例会日と定め、プランを一応完了させたところで、
「どうしてももう一人必要だ」
 との深慮に達していた。四名はホテルニューオータニのプールサイドで、彼是と候補者を絞った。最終選考に残ったのは神奈川大卒業生で、司法試験の勉強に勤しんでいる古賀浩靖である。
 追加烈士の条件は、
「親族、近親者に警察、自衛隊関係者がいない者」
 だった。古賀が選出されたのは彼が必勝、小賀、小川の何れとも親しかったからである。古賀は必勝を慕い、兄事していた。