剣と日輪

 キーンは原稿用紙に手をかけかけたが、ふと手を止めてしまった。
「止しましょう。これを見たら、貴方は死んでしまう」
「はは。ありゃあ冗談です」
「本当に?」
 公威は首を振った。イエスだかノーだか判別できかねた。
「まっ。これは後のお楽しみということで」
「はは。ほんとにキーンさんは日本人みたいな受け応えをする」
「私ほんとは金田と申します」
「やっぱり」
 公威が川端康成と距離を置くようになってから、キーンがその代役を務めるようになっている。
「キーンさんが日本人になったら、私はアメリカ人になろう」
「そりゃあいい」