剣と日輪

「じゃ決まりですね。電話してこよう」
 公威はホテルのロビーに入り、公衆電話をとったのだった。
 その夜公威とキーン、ストークスの日・米・英の三国人は、連立って下田の磯料理屋へ入店した。
「ここの伊勢海老は最高だよ」
 公威は日本語が喋れないストークスの為に、英語で外人二人に期待を持たせた。
「それは是非賞味したいです」
 キーンは日本食が大丈夫だった。
「刺身OK?」
「オフコース」
 ストークスも、
「刺身が食えずに、タイムズの東京支局長が務まるか」
 といった調子だった。
「ようし」
 公威は伊勢海老のフルコースを、三人しかいないのに五人前注文した。地酒を振る舞い御満悦だ。
 ストークスが公威の娘紀子を、
「可愛い」
 息子の威一郎を、
「元気がよくて将来が楽しみですね」
 とべた誉めすると、公威は、
「あの二人の成長だけが楽しみだ」
 と益々ご機嫌になり、
「伊勢海老もう二人前」
 と追加注文した。
「それだけのがたいだ。食えるでしょう」