剣と日輪

 晴れがましい雨曇(あまぐもり)だった。国立劇場屋上には、荘重(そうちょう)で華(か)彩(さい)な一団があった。公威は壇上にある。藤原岩市、三輪良雄両来賓代表の挨拶に続いて、女優の倍賞美津子、村松英子が公威に花束を贈呈すると、必勝の号令が響き、楯の会隊員のパレードが進水した。途端に雲間は開け、日光がパレードの進路を光照(こうしょう)した。世界で一等小さな軍隊の一糸乱れぬ行進を、必勝は先頭で指揮していた。第七班班長小川正洋が、楯の会隊旗を掲げている。純白に真紅の兜を描いた清(せい)白(はく)の旗章だった。
 自衛隊関係者、芸能人、ジャーナリスト、文人等の来賓達はこの神秘的な景(けい)趣(しゅ)に、吾を忘れている。山本一佐は来賓席から観覧しつつ、
(丸で神兵のようだ)
 と感銘を受けた。
(自衛隊には理想がないが、楯の会には凛冽(りんれつ)たる理想がある。このような軍隊が少数とは言えこの世に在るとは、奇蹟に近いことだ)
 政治に支配されず、堅固な志操で進退する軍隊というのは、楯の会だけであろう。