「よし、皆三島版ドレミの歌を唄おう。我等のカリスマヒーロー三島さんに敬意を込めて」
「オーケー」
 学徒達は整列し、珍妙な替え歌を合唱し出した。

ドはドスケベのド
レはレズビアンのレ
ミはミシマのミ
ファはファナティックのファ
(烈士と呼ばれる男 森田必勝の物語より)        
 
 くそ真面目に馬鹿馬鹿しい替え歌を歌い上げる学生達に公威は、
(こいつらとなら、死んでもいい)
 と悦目(えつもく)していた。公威をからかいながら敬尚(けいしょう)する学生達も同じである。
 必勝はへべれけとなり、早稲田ハウスに帰宅するや、宮崎正弘に、
「楽しかった」
 と告げ、寝間に敷いてあった布団に倒れ込んだ。そのまま昼近く迄バク睡したのである。
 
 目覚めるや漫然と必勝は筆をとった。公威に礼状を認めたのである。文の末尾を必勝はこう締め括(くく)り、速達にして送った。
「先生のためには、いつでも自分は命を捨てます」
(三島由紀夫「日録」より)