公威は仕事の都合上二週間しか体験入隊できない。その後十日間東京で仕事を片付け、最後の一週間を再び富士学校で過ごす。スケジュールに追われる売れっ子作家の苦肉の策である。一時帰宅する前の晩、
「祖国防衛隊」
の若獅子達は、夕食会場で、ささやかな一時送別会を催してくれた。公威は学生長持丸からコメントを求められると、学生達に語り残した。
「諸君が此処で研鑽(けんさん)されたものは、諸君の血肉となり、将来の祖国防衛闘争の基礎となるであろう。そしてここを巣立った時、諸君は最早一学生ではない。国士なのだ。一人前とはいかぬが、日本の未来を担う国士となるのである。自衛隊は我等の出発点であり、母胎でもある。諸君の十日後の成長振りを楽しみに、私は娑婆へ戻る。諸君の健闘を祈る」
公威は真面目腐った相好を崩し、
「さあ、今夜は飲もう」
と持参したウイスキーの瓶を掲げた。
「おうっ」
学生は元気溌剌となった。
「但し、又真夜中にランニングがあるかもしれない。程々にな」
「分かってます」
持丸の返答に、学生達は一杯ずつウイスキーを体内に流し込んだ。
「やっぱうめえなあ、酒は」
必勝と山本が久々のアルコールを味わっていると、公威が背後に立った。
「ご馳走様でした」
必勝はいい気分である。公威は純然と笑いかけ、
「君には持って生まれた何かがあるなあ」
と告げた。
「それは何ですかね」
「祖国防衛隊」
の若獅子達は、夕食会場で、ささやかな一時送別会を催してくれた。公威は学生長持丸からコメントを求められると、学生達に語り残した。
「諸君が此処で研鑽(けんさん)されたものは、諸君の血肉となり、将来の祖国防衛闘争の基礎となるであろう。そしてここを巣立った時、諸君は最早一学生ではない。国士なのだ。一人前とはいかぬが、日本の未来を担う国士となるのである。自衛隊は我等の出発点であり、母胎でもある。諸君の十日後の成長振りを楽しみに、私は娑婆へ戻る。諸君の健闘を祈る」
公威は真面目腐った相好を崩し、
「さあ、今夜は飲もう」
と持参したウイスキーの瓶を掲げた。
「おうっ」
学生は元気溌剌となった。
「但し、又真夜中にランニングがあるかもしれない。程々にな」
「分かってます」
持丸の返答に、学生達は一杯ずつウイスキーを体内に流し込んだ。
「やっぱうめえなあ、酒は」
必勝と山本が久々のアルコールを味わっていると、公威が背後に立った。
「ご馳走様でした」
必勝はいい気分である。公威は純然と笑いかけ、
「君には持って生まれた何かがあるなあ」
と告げた。
「それは何ですかね」


