剣と日輪

「有り難う御座います」
「だから」
 公威は鷹を連想させる、鋭美な目頭となっている。
「此処(ここ)を、辞める」
 坂本は辺りの官僚達を観色(かんしょく)した。忙事(ぼうじ)に追われた権力の申し子達は、誰も聴いていない。
「そんな事言っちゃって、いいんですか」
「いいさ。言論の自由だよ」
 坂本は謹直そのものといった外見の根元に横たわる、公威の底知れぬ奇(き)快(かい)性を垣間見、
(こいつあ、大物だ)
 と舌を巻いた。
 
 終業のベルが庁舎内に鳴動(めいどう)するや、公威は未整理の書類を引出しに仕舞い込んだ。
「終わった。出よう。前祝だ」
 公威より坂本は四つ年嵩(としかさ)であったが、威容に呑まれて従人と化していた。
 二人は二言三言交わしながら、都電で銀座へ出た。公威が、
「四丁目に、美味い洋食屋がある。行こう」
 と断定し、若人はハンバーグステーキを口にした。
 公威は上機嫌で、
「大蔵省なんか、絶対辞めてやる」
 と気炎を上げた。然も、
「来週中に」
 と付加えた。
「まあ、そう性急にせずとも」