ハルジオン。

「……は?」

達也は訝しげに振り向いた。

少年は相変わらず洞窟の中でトランプを繰っている。

その小さな口が再び動いた。

「帰れないって言っただろ。ここ、別世界なんだから」

「……別世界?」

何言ってんだ?コイツ。

達也は眉間に皺を寄せ、哀れむような顔で少年を見た。

「お前、頭どうにかなって」
「螢の森、とも言うけどね」

少年は達也の言葉に重ねるようにそう言うと、トランプを濡れた岩肌に並べ始めた。