ハルジオン。

目指す先は決まっていた。

『愛染窟』

あいぜんくつ、と呼ばれるその小さな洞穴には、古くから山神が奉られていて、昔は修験道の行場としても使われていたと言う。

「……畜生」

達也は杉の木にもたれ掛かり、重々しい空を見上げた。

むんとした草木の匂いが鼻をつく。

こう言う時は決まって雨が降る。

「急ぐか」

何かに急かされるように体を起こし、再び山道を登り始める。