ハルジオン。

まさか、とふと思う。

靖之が描いた「螢の森」の地図のせいだなんてことがあるだろうか。

それは、どんな願いでも叶う森。

「馬鹿馬鹿しい」

達也は吐き捨てるように呟き、鞄を手にホテルの部屋を後にした。

ケータイを開き、東京行きの新幹線の時間を調べる。幸い座席はすぐに取れた。世間はまだゴールデンウィークに浮かれているんだろう。


――それから数時間後。

達也は一人、鬱蒼と木々が生い茂る多紀連山の森の中へと足を踏み入れていた。