ハルジオン。

達也は昨夜、ドロリとしたまどろみの中で夢を見た。

母の夢だ。

どこかの町の石段を登り、誰かと話し込んでいる母を見上げている自分……

そんな夢だった。

夢を見るのは久しぶりだった。

ましてや、母の記憶など皆無に等しいのだから、母の姿が夢に出てくることなどまずなかった。

無言で胸ポケットに手を当てる。

この写真のせいか、それとも、

「……酒のせいか」

と、達也は苦笑いした。