「……つッ」

僅かばかりの荷物を鞄に詰め、達也は顔を歪めた。

頭が割れるように痛い。

昨夜一人で浴びるように飲んだビールのせいだろう。

最初からこうなる事は分かっていた。

そもそもこの町に良い想い出などないのだ。

子供の頃のタイムカプセルを掘り起こしたところで、出てくるのは砂を噛むような苦い想い出ばかり。

そんな事は分かり切っていた。

「じゃあ何で来た?」と自問する。

さあね、何で来たんだか。そんな答えしか返せない自分が馬鹿馬鹿しい。