ハルジオン。

笛が鳴る。

達也が扉の内側に立つ。

「たっ……」

百合子は二年前を思い起こし、言葉を詰まらせた。

行ってしまう。

またあの時のように、たっちゃんが行ってしまう。

百合子はぎゅっと瞳を閉じた。


――ピーィィッ

笛が鳴り終わると同時に、百合子はハッと我に返った。

車掌が汽車に乗り込むのが見える。

ドアが……

百合子が息を詰めた瞬間、目の前に達也の手が伸びてきた。