「教えてくれたっていいじゃない」

「わりぃ」

「何がわりぃ、よ」

百合子が達也の口真似をして、軽く足に蹴りを入れる。

「はは……痛って!」

達也は身をよじってホームの端っこに避難し、二年前まで父親と暮らしてきた故郷の山を見つめた。


「……来ないね」

ハンドバッグを肩に掛け直し、百合子が俯きがちに呟く。

「汽車」

「ん……ああ」

達也がレールの先に視線を移すと、柔らかい風が頬をすり抜けた。