エピローグ



「夢を見ていたみたい」

田んぼの中に建つ駅のホームで、百合子が髪をかき上げた。

「そうだな」

達也は小さめの旅行鞄を手に、木造の駅舎を振り向いた。

柱時計は昼の十一時を指している。

ゴールデンウィークの最終日。今から東京に戻るのだ。

「あのタイムカプセルに詰まってた物って、いったい何だったのかしらね」

百合子は駅舎のベンチに腰を下ろした。

「……さあな」

達也が肩をすくめてみせる。

その顔はどこか晴れやかで、再会した時よりも一回り大きく見えた。