「親父……」

坂道の途中で座り込み、広々とした遠野平野を見下ろす。


……馬鹿野郎が。


頬をすり抜ける風に睫毛を振るわせ、達也は茜色の空を見上げた。

一筋の飛行機雲が、綺麗な直線を描いて延びていく。


「くそったれ」

達也はグイと涙を拭いた。

夕陽に滲む稜線の向こうに、翼を広げたトビが螺旋を描いた。



雨は、

どうやら降らないらしかった。