ハルジオン。

――数時間後、


「長い間お邪魔しました」

門先で百合子が礼を述べると、房子はすっと指先を伸ばし、膝に手を添えて深々と頭を垂れた。

「こちらこそ、何のお構いもできませなんで」


「……また、来るから」

「いつでもおいで」

「元気でな」

達也が手を取って言うと、祖母は皺だらけの相貌を崩して何度も頷いた。

その顔に夕日が映る。


「こうしとると、あの日のことを思い出すようじゃ」

「あの日?」

百合子が問うと、房子は遠い目で頷いた。