ハルジオン。

「どちら様かの?」

「うわ!」

背後から声を掛けられ、達也は思わず叫び声を上げた。

「すみません、勝手に」

百合子が振り向くと、そこには手にいっぱいの野菜を抱えた老婆が立っていた。


「いんやこっちこそ。裏の畑におったもんだで、ちいとも気づかんで……」

そう言って達也を見る。

途端に老婆の表情からみるみる笑みが消えていった。

「……あんた」

ドサッと野菜を落とし、震える手を達也に差し伸べる。

「タツ君かい?」

「……ええ、達也です」

達也は驚きを隠せないまま、差し出された手を握り返した。