ハルジオン。

「……留守かしら?」

「さあな」

達也が首を傾げる。

今さらながら、連絡もなしにいきなり尋ねてきてしまったことを後悔した。

とはいえ、電話番号が分からないのでは連絡の取りようもないのだが。

「仕方がない。待とう」

「そうね」

達也は玄関先に紙袋を置き、今しがた登ってきた坂道を見下ろした。

「……綺麗な景色」

「ああ」

百合子の隣に立ち、眼下に広がる遠野平野を見渡す。

山あいの盆地をイメージしていただけに、思いの外広々としたその田園風景に自然と目が細くなる。

とその時、不意に人の気配を感じた。