(六)


若芽がそよぐ一面の田園風景の中を、達也と百合子は肩を並べて歩いていた。

「なんか似てるね」

「ん?」

「景色」

軽やかな足取りで百合子が振り返る。

「ああ」

達也はなだらかに続く山々の稜線を遠くに見ながら目を細めた。

見渡す限りの水田、

縦横に引き込まれた用水路、

天高く澄んだ空、

沢蟹、ザリガニ、おたまじゃくし……

子供の頃、それが当たり前だと思っていた景色が、ここ遠野にはまだ、そのまま残されていた。