「行ってみたらどうかな?」

百合子が達也の横顔を見て言った。

達也は黙ったまま、炬燵の上に置いた缶ビールを見つめていた。

「たっちゃん?」

靖之が心配そうに覗き込む。

こいつらどこまでお人好しなんだか。

そう思うと、達也の顔に不意に笑みが浮かんだ。

「……そうだな」

達也は静かに答え、封筒の裏に書かれた住所を目で追った。


岩手県遠野市


それが、母逸子の生まれ故郷だった。