ハルジオン。

「……いつもこうして飲んでた」

「お父さん?」

「ああ」

達也は両手を後ろに回し、もう一度居間を見渡した。

そこには父と二人で暮らしてきた空気が今も残っていて、耳を澄ませば、あの日の二人の声が聞こえてくるようだった。


「……テレビで見たんだけどさ」

「ん?」

「末期ガンの痛みって知ってる?」

「末期ガン?」

達也は靖之に問い返した。

突然何を言い出したのか、皆目見当がつかなかった。