ハルジオン。

靖之の話を聞いたせいだろうか。

不思議なことに、ずっと胸に抱いていた父親に対する嫌悪感や憎悪が、今はもう消え失せていた。


チーン……

小汚い仏壇に向かい、靖之と百合子が両手を合わせる。

その後ろで達也は小さく

「……ただいま」

と呟き、胸ポケットから色あせた一枚の写真を取りだした。

幼い自分を挟んで、幸せそうに微笑む父と母の姿……

それは、遠い遠い昔の記憶。

もう二度と手に入らない、幸せだった日々のほんの小さな思い出。