ハルジオン。

「僕が頼んだんだ」

「……え?」

「たっちゃんがいつ帰ってきても使えるように、電気と水道だけは止めないでって」

「お前……」

「でも、蛍光灯が切れてるから、豆球くらいしかつかないんだけどね」

「靖之」

「さ、上がって!オジサンにちゃんと挨拶しなくちゃ」

「そうよ。ほら」

「ちょっ」

二人にぐいと引っ張られ、達也は二年ぶりに我が家の居間に足を踏み入れた。

「……」

部屋を見渡し、豆球の灯りの下で静かに埃をかぶったコタツの脇に膝を折る。

ここで親父は死んでいた。

ザラリとささくれだった畳の目に視線を落とし、達也は唇を噛んだ。