ハルジオン。

達也は呆然と立ち尽くした。

玄関も、

汚い台所も、

穴だらけの敷居戸も、

何もかもがあの日のまま。

まるで達也の帰りを待っていたかのようにひっそりとたたずんでいた。

無言で一歩中に入り、埃とカビに包まれた下駄箱にそっと手を触れる。

途端に、飲んだくれのダメ親父と暮らした日々が、次から次へと達也の脳裏に浮かんでは消えた。

――パチンッ

と背後で乾いた音がした。

少し遅れて、家の中が豆球ほどの明るさを取り戻す。

「……電気?」

まさかと思い振り返ると、靖之が泣き笑いの顔で頷いた。