ハルジオン。

「久しぶりに覗いてみようよ」

「賛成!」

「はあ?」

達也はダダッと橋を渡る二人を唖然とした顔で見遣り、声を荒げた。

「ちょ……」

こんな夜にあのボロ家を覗くなど、正気の沙汰じゃない。

達也は慌てて二人を追いかけた。

「待てよ、おい!」

「大丈夫だって」

「何が大丈夫なんだよ。まったく……肝試しじゃねーんだぞ」

達也は呆れ顔で長屋の入口に立ち、憮然とした顔で戸口の表札を見た。

藤原篤史・達也

墨で書かれた二人の名前が、今にも消えそうに霞んでいる。