ハルジオン。

それからしばらく、三人は螢と一緒に逆瀬川の土手を歩いた。

「……見えたわ」

小さな橋に差し掛かった時、百合子が一軒の家を指さした。

「たっちゃんの家だ」

靖之が振り返る。

「……ああ」

田んぼの向こうに建つ長屋を見つめ、達也はポツリと呟いた。

達也があの家を出たのは二年前。

長屋は三家族が壁を隔てて暮らせる造りになっていたが、その時にはもう、達也以外誰も住んではいなかった。

当然今も空き家のままだ。