ハルジオン。

「……そう言えばさっき、森での記憶がないって言ってたよね?」

百合子が達也を見上げる。

「それは眠ってただけで……」

達也は口ごもり、手にした一枚のトランプを握りしめた。

そう、なのか?

本当に眠っていただけなのか?

それとも……

「チッ」

舌打ち混じりに首を振る。

いくら自分に尋ねてみても、失われた記憶が蘇る気配はない。

ただ不思議なことに、森で目が覚めてからずっと引っかかっていたモヤモヤが、今はすっかり消えていた。