「旅人……たっちゃんのお父さんが付けてくれたんだ」

靖之はふわりと微笑んだ。

「あの頃の僕は塞ぎ込んでてさ、見かねたオジサンがもう一つ名前をくれたんだ。生まれ変われるようにって」

「へえ!」

百合子が目を輝かせる。

「素敵な話ね」

「だろ?何だか嬉しくてさ。森に行くとその名前を使ってた。でも、普通じゃ読めないんだ。照らす人と書いて」

「アキト」



「……え?」

靖之が驚きの声と共に振り返る。

そこには、手に一枚のトランプを握りしめた達也が、呆然とした表情で靖之の背中を見つめていた。