……知っている。

と震える手で胸ポケットを探る。

すぐにツルリとした薄いプラスチックの感触を指先に感じ、達也はそれをポケットから抜き取った。



「それにしても不思議な話ね」

靖之のトランプを見つめながら、百合子が髪をかき上げた。

「そうだね」

感慨深げに靖之が頷く。

「あ、そうだ」

靖之は何かを思い出した様子でトランプをズボンにしまった。

「実はさ、僕には靖之以外にもう一つ名前があるんだ」

「え?」

どういうこと?と百合子が振り向く。