ハルジオン。

「だから僕には三度目の記憶がない。でもね、その時刻みつけた気持ちだけは今でもはっきりと覚えているんだ」

「気持ち?」

達也は思わず聞き返した。

さっきからずっと、達也の胸の中で何かがしきりに騒いでいる。

なのにそれが何なのか、どうしても思い出すことができないでいた。

「そう、気持ち。逃げない勇気と、いつだって笑っていいよって言える心」

「勇気……」

――ドクン!

靖之の言葉に鼓動が反応する。

おかしい。

俺は何かを知っている。確かに知っているはずなのに……

まるでモヤがかかったかのような記憶に、達也は苛立ちを覚えた。