ハルジオン。

「てかお前、その泉とやらにたどり着いたかどうか覚えてないのか?」

「それはね」

靖之は達也の問いに頷き振り向いた。

「螢の泉にたどり着くと、その日の森での記憶が全部消えるんだ」

「消える?なぜ?」

「二度と行けなくするためだよ」

靖之の答えは単純明快だ。

「……そっか」

百合子は納得の表情で頷いた。

「一度分かってしまえば、記憶を消さない限り何度だって行けてしまう……」

「そう言うこと」

靖之は足元を見つめ、あぜに咲く春紫苑を摘み取った。