ハルジオン。

三人は八坂神社の鳥居をくぐり、逆瀬川の土手を歩いた。

まだ少し湿った土手には春紫苑が白い花を咲かせ、三人を包むかのように優しく風に揺れている。

見渡す限りの田んぼ。

そして山。

ゲラゲラと賑やかなカエルの大合唱を聞きながら、靖之は凛と澄んだ夜の空気を吸い込み、話を続けた。



「初めて螢の森に迷い込んだ時、旅人と出会ったんだ」

「旅人?」

百合子が振り返る。

「そう。名前も知らない通りすがりのオジサンでね、初めての僕に森のいろんなことを教えてくれた」

靖之は舞い上がった螢の灯を目で追いながら夜空を見上げた。