ハルジオン。

静かな夜だった。

雨上がりにしては湿度もなく、むしろ濡れた地面から心地よい涼しさが漂ってくる。

「螢の森……」

百合子が呟く。

「本当にあったんだ」

「しかも三回ってお前、そんなのどうやって行ったんだよ?入り口でもあるのか?」

「ないよ。気がつくと森の中にるんだ。愛染窟って覚えてるかな?昔たっちゃんに教えてもらった三岳の洞窟」

「あ、ああ」

達也と百合子が顔を見合わせる。

愛染窟なら、つい今しがた達也が行ってきたところだ。

「……少し歩こうか」

靖之はフワリと微笑むと、二人を促して歩き出した。