ハルジオン。

「……僕の家はね、今でこそ無意味に広いけど、昔はとても貧しくてさ、家族もみんなバラバラだったんだ」

靖之は床に散らばった鐘や太鼓のバチを拾いながら、独白するように話し出した。

「何の話だ?」

「まあ聞いてよ。父さんは蒸発、母さんは男作って僕を邪魔者扱いしてさ」

酷いもんだった。

そう言って、靖之は鐘を棚に戻し、乾いた笑いをこぼした。


「はあ?」

達也が唖然と靖之を見る。

「そんな話初耳だぜ」

「そりゃそうさ。初めて話すんだから」

靖之はどこか楽しそうだ。